制吐薬について

【悪心・嘔吐の機序】

「CVとCTZ」

脳にあるCV(嘔吐中枢)とCTZ(科学受容器引き金帯)が嘔吐に関与している。CVはBBBの中にあり、CTZはBBBの外側にある。

刺激が直接CV、またはCTZ→CVと伝達されることで嘔吐を起こす。結局はCVが嘔吐を引き起こす部位であって、CTZはそのきっかけ(引き金)でしかない。

「中枢性嘔吐と抹消性嘔吐」

嘔吐までの経路は4種類ある。中枢性と末梢性嘔吐の各2経路ずつ。

中枢性嘔吐は嗅覚やうつ、薬物が直接CTZ、CVを刺激することでおこる嘔吐のこと。

末梢性嘔吐は臓器からの迷走神経、内耳からの前庭神経を介してCTZやCVを刺激することで起こる嘔吐のこと。

そしてCTZやCVにある受容体が5種類あり、そのうち制吐薬は4種類へ作用する。

H1受容体、M受容体、ドパミンD2受容体、セロトニン5HT3受容体、ニューロキニン1受容体

ドパミンD2受容体」

中枢性の制吐作用:CTZのD2受容体をブロックすることでCVへの刺激を抑制する。

末梢性の制吐作用:消化管のD2受容体をブロックすることでアセチルコリンの遊離を促進し消化管蠕動運動を促進させ内容物の停滞を解消する。

ドンペリドン

→BBBを通過しずらいため錐体外路症状は出にくい。末梢性制吐作用が強い。

・メトクロプラミド

→BBBを通過しやすいため錐体外路症状が出やすい。ただ5HT3受容体拮抗作用(制吐作用)と5HT4受容体刺激作用(消化化運動促進作用)を併せ持つ。

・イトプリド

→CheE阻害作用を持つため消化管運動促進作用を併せ持つ。

※イトプリドとモサプリドの使い分けは?

イトプリドは上部消化管(胃)のみに作用するためGERDなどに有効。

モサプリドは5HT4刺激作用によって、上部消化管に加え下部消化管(十二指腸以下)へも作用するため便秘などにも効果がある。

 

スルピリドはどんな薬?

中脳辺縁系のD2ブロック作用(抗精神病作用)とCTZのD2ブロック作用(制吐作用)、末梢性D2ブロック作用(消化管運動促進作用)を持つ薬。胃粘膜血流改善作用もあると(適応に胃・十二指腸潰瘍あり)。モサプリド同様消化管を動かす作用もあり、メトクロプラミド同様制吐作用もあるが同時に錐体外路症状も懸念される。加えてプロラクチン値を上昇させることにより乳汁分泌や女性化乳房などの副作用もある。

スルピリドは悪心嘔吐の適応なし)

ドンペリドンとメトクロプラミドは薬剤(抗がん剤に限らない)による嘔吐にも適応を持つが、イトプリドは慢性胃炎に対する適応しかもたない。消化管内容物の停滞による嘔吐がある場合はイトプリドが最も適しているように思われる。

錐体外路障害の副作用に関して、ドンペリドンが0.1%以下、イトプリド、メトクロプラミドが頻度不明であった。構造式はどれも油の性質がありそうだがメトクロプラミドが特にBBBを通過し錐体外路症状を置きやすいとされているらしい。

「5HT3受容体拮抗薬」

抗がん剤による制吐薬の第一選択薬。遅発性の悪心・嘔吐には効果が低い。

※遅発性嘔吐とは?

抗がん剤投与後24時間~1週間程度に起こる嘔吐。24時間以内を急性嘔吐、予防投与をおこなっているのに起こる嘔吐を突発性嘔吐という

消化管・CTZの5HT3受容体を遮断し、VCへの刺激を阻害する。セロトニン受容体で嘔吐にかかわるのはサブタイプの3だけ。

・ラモセトロン

→0.1㎎錠(ナゼア)で抗がん剤の制吐薬に使用可能。さらに2.5μg、5μgの製剤(イリボー)になると過敏性腸症候群のみの適応に。量によって適応が異なる。

※イリボーはセロトニン5HT3受容体拮抗作用を示し排便亢進・下痢の抑制、大腸痛覚の過敏を抑制する。

※モサプリドは5HT4受容体刺激作用により消化管の運動機能を改善する。

・グラニセトロン

注射は「抗悪性腫瘍薬投与に伴う悪心嘔吐」と「術後の悪心嘔吐」の適応あり。内服(カイトリル錠)は「抗悪性腫瘍薬投与に伴う悪心嘔吐」の適応のみ。

→国内外のガイドラインや教科書でグラニセトロンを術後の悪心嘔吐に使用する記載があり公知申請を通して承認された。

→術後何日まで使用できるかの記載はなし。手術が原因と思われる悪心嘔吐が出た際は何日後でも使用可能と思われる。

・パロノセトロン

半減期が40時間とほかの5HT3受容体拮抗薬よりも長い。グラニセトロンよりも遅発性嘔吐に対して抑制効果がある。適応は「抗悪性腫瘍薬投与に伴う悪心嘔吐」のみ

・ラモセトロン

投与量によって適応が異なる。量が多い方(ナゼア)が「抗悪性腫瘍薬投与に伴う悪心嘔吐」の適応で、量が少ない方(イリボー)が「下痢型過敏性腸症候群」の適応。

「NK1受容体拮抗薬」

・イメンド

・プロイメンド

併用薬や投与期間、投与量などたくさんの注意が必要。ケモで使用する際は再度勉強する。

 

QH1受容体の薬で吐き気に使うものは?

Q末梢性で前庭神経を介して起こる吐き気はどうしたらよい?(セファドールとか?)